FTSE100の週終値は7409(前週終値比-62)
英ポンド相場は大荒れもFTSE100の値動きは限定的
FTSE100の日足チャートです。
この週最大の材料は、なんと言っても英EU離脱交渉について、英国とEUとの間で草案合意に至ったことでしょう。
折しも米国の感謝祭を前にマーケットの流動性が低下していたところだったので、とくに英ポンド相場は大きく乱高下しました。
一方でFTSE100はそこまで動揺がなく、草案合意発表後は7400付近で横ばい推移が続いています。
FTSE100と英ポンド米ドル・今週の振り返り
この週のFTSE100を、英ポンド米ドル相場も参照しながら、時間足で追ってみたいと思います。
19日(月)の英ポンドは、前週終値同水準の1.2843で寄り付いた後、東京時間東京時間はほぼ横ばいでの推移となります。
欧州時間に入って1.2883まで買われますが、その後反落して日中安値の1.2793。
NYではやや買い戻されますで、1.2846とほぼ寄り水準での引けとなります。
FTSE100は、前週終値の7471から下に窓を開けて7452で寄り付き、21時台には、週の高値である7513まで上昇と、前週に似た展開となります。
しかし、その後は反落となり、7443での引けとなります。
この日に伝えられた英国関連ニュース
- ライトムーブ住宅価格(11月)-1.7%
- デビス元英EU離脱担当相発言「メイ首相不信任案の提出には至らない見込み」
- 不信任投票は2日以内におこなわれる見込み、保守党議員から50通を越える不信任文書が提出された模様(英タイムズ紙)
- 英首相報道官「ブレグジット交渉は非常に進展しており、数日中にさらに突っ込んだ協議となるだろう」「政府は移行期間の延長は必要ないと信じているが、バックストップ措置の代替案となっていることは確か」
- メイ首相はブレグジット延長には否定的
20日(火)の英ポンドは、日本時間の19時から予定されているBOE総裁・委員の議会証言を控え、1.2850前後の様子見相場が続きます。
議会証言では、カーニー総裁やサンダース委員の発言などが嫌気されて、マーケットは英ポンド売りで反応。
証言前1.2834から、3時台には1.2776まで下落します。
その後も戻りが鈍く、終値は1.2786。
FTSE100は、7429で寄り付き、20時台には7469まで上昇しますが、0時台には7388まで下落。
ふたたび7462まで買い戻されますが、また反落して終値7407。
この日に伝えられた英国関連ニュース
- カーニーBOE総裁議会証言「予測はスムーズな移行を前提にしている」
- サンダースBOE委員議会証言「合意なき離脱で英ポンド相場は下落する可能性」
- ホールデンBOE委員議会証言「ブレグジットの不透明感が第4四半期成長を弱含ませる可能性」
- カーニーBOE総裁議会証言「シナリオとしては、利上げも利下げも想定している」
21日(水)の英ポンド米ドルは、東京時間は前日終値水準で横ばいとなります。
欧州時間に入り、17時台には1.2819までは買われますが、すぐに売られて1.2771。
NY時間では何度か上値を試しますが、結局この水準を上抜けずに押し戻され、東京時間よりレンジをやや切り下げて1.2770水準となります。
FTSE100は、7436で寄り付いた後に買われ、1時台には7507まで上昇しますが、19日の7513は上抜けずに、終値で7463まで下落します。
この日に伝えられた英国関連ニュース
- コービン英労働党党首とスタージョンスコットランド首相が英EU離脱協定案・合意なき離脱の阻止に向けて共闘(英メディアスカイニュース)
22(木)の英ポンド米ドルは、東京時間に1.2790前後までじり高推移となります。
欧州時間に入り、19時台には英EU離脱に関する英国・EU間で草案合意に至ったという報道から英ポンドが買われ、一時1.2926の高値をつけます。
20時台には、英政府高官の発言が伝えられて、1.2789と瞬間的に18時台の水準まで下落して上昇分を完全に消しますが、ふたたび上昇し、1.2770前後のレンジに切り上げて1.2876のNY終値となります。
一方でFTSE100は、7448の寄り付き直後こそ7402まで下落したものの、19時台・20時台の英ポンド乱高下にも反応は限定的で、高値7432-安値7382の間での値動きでした。
その後は徐々に動意薄となり、引けの7402まで特に見せ場がありませんでした。
この日に伝えられた英国関連ニュース
- 英EU文書「EUと英国は関税における緊密な協力にコミットする」「EUと英国は単一関税領域の構築にコミット」「自由貿易領域を創設、規制面の緊密な協力を見込む」
- トゥスクEU大統領、英EU離脱に関する草案文書をEU27か国に送付
- 英政府高官発言「ジブラルタル問題は長引くだろう」「ブレグジット合意に向けて大いなる進歩があった」
- スペイン政府筋「スペインは英領ジブラルタルの明確性に欠けるとしてブレグジット草案には反対する姿勢」(一部通信社)
- メイ首相発言「昨晩、ユンケル欧州委員長と良い議論ができた」「英国のEU離脱について2回目の国民投票に反対」
23日(金)の英ポンドは、東京が祝日で休場だったため横ばいでの推移、その後の欧州では、ラーブ前英EU離脱担当相発言をきっかけに売りとなり、ロンドンフィクス前後には1.2799と一時1.28を割り込みます。
その後はやや戻りがあり、週の終値は1.2802。
FTSE100は、7395で寄り付いた直後に、ラーブ発言で一時大きく売られ、7352と週の安値を更新します。
その後は7451まで戻りますが、また7400前後まで下落。
結局、7409での週引けとなっています。
この日に伝えられた英国関連ニュース
- ラーブ前英EU離脱担当相発言「議会はメイ首相のブレグジット案を否決するだろう」「EUメンバーであるときよりも不利な条件に」
週足チャート
週足チャートで確認すると、この3週間大き動きはないものの、2手連続の陰線となっています。
前週に続き、荒れ狂う英ポンド相場を横目に、動意の薄いFTSE100が不気味ではありますが、英ポンド急騰の場面でも下落が限定的だったことには驚かされました。
英EU離脱の大きな最初の山場を通貨したことは間違いありませんが、この後も英国議会承認、アイルランド国境問題、ジブラルタル問題、スペインのブレグジット拒否など、次々と山場がやってきますので、まだまだ気は抜けません。
今週発表される英国経済指標
英国関連の指標発表は少なく、それぞれの重要度も高くありません。
- 28日(水)…ネーションワイド住宅価格指数
- 29日(木)…消費者信用残高/マネーサプライM4
- 30日(金)…英GfK消費者信頼感指数
年初来の配当と支払金利
FTSE100は支払金利がふたたび30円台/日に
1/2〜11/23 | 受取配当 | 支払金利 | 差引利益(A)※括弧内は前回 | 必要証拠金(B) | A÷B ※括弧内は前回 |
---|---|---|---|---|---|
FTSE100 | 29,967円 | 7,322円 | 22,645円(21,900円) | 26,000円 | 87.10%(84.23%) |
NYダウ | 51,538円 | 54,405円 | ▲2,867円(▲3,123円) | 83,000円 | ▲3.45%(▲3.76%) |
日経225 | 37,184円 | 0円 | 37,184円(37,184円) | 76,000円 | 48.93%(48.93%) |
DAX | 0円 | 1,202円 | ▲1,202円(▲1,202円) | 42,000円 | ▲2.86%(▲2.86%) |
年初から先週までの受取配当から支払金利を差し引いた実利益を計算しています。日経225・DAXは前週と変わらずです。
NYダウは、じりじりとマイナス幅を縮めています。
FTSE100は、また支払金利が33円台/日と上昇しています。
スペインのブレグジット拒否が新たな火種か
今日(25日)のEU首脳会議に注目
英国のEU離脱合意には、英国以外の27の国の中で、加盟国人口の65%に達する合意が必要となっており、スペインの人口は域内第4位(2017年調査で4650万人)の9.1%、英国を除いたEU内では10.4%を占める大きな影響力を持っています。
英国の「植民地」であるジブラルタルは、1713年のユトレヒト条約以降イギリス領となっていますが、現スペイン政府の公式な立場は、ジブラルタルの国土や軍事設備の利用を英国に対して認めたにすぎず、主権は放棄していないというものであり、今回の草案の中でジブラルタルに関する問題が明確にされていないことから示されたのが今回の姿勢です。
降って湧いたように出てきたジブラルタル「問題」は、国際社会的には、武力による現状変更が国際法上違法ではなかった18世紀に、スペインが3度にわたり武力での主権回復に失敗していることや、1967年のジブラルタル住民投票で99.6%の圧倒的支持で英国への帰属を選んでいることからも「終わった問題」であることは確かなのですが、英国の窮状につけ込んで、何か有利な譲歩が引き出せないかというスペイン側の思惑が透けて見えます。
数世紀に渡り血で血を洗う争いを続けてきた欧州で、英国に怨みを持っていない国など存在しませんから、「江戸の仇を長崎で討つ」的に今回のような話が他のEU加盟国からも出されると、英国のEU離脱は収拾がつかなくなり、結局は「合意なき離脱」に向かわざるを得ないという最悪のシナリオが想定されます。
今のところ、さすがにスペインがそこまで強硬な姿勢はとらないのではないか、あるいは、スペインが反対でも65%の同意をクリアできるのではないか、という見方が支配的ではありますが、一方ではサンチェススペイン首相が今日(25日)のEU臨時首脳会議への出席を見送るのではないかという憶測も流れています。
日本でも隣県はたいてい仲が悪いですが、欧州では国家レベルでこの小競り合いを続けてきたわけで、それがEUというひとつ屋根の下で無理やり同居していると考えると、揉め事が起きないほうがおかしい、ということなのでしょう。
とりあえずは、今日のEU首脳会議の経過を見守りたいと思います。
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