20人に1人が悩む「手のひらの汗」への理解をお願いします。

20人に1人が悩む「疾病」

手掌多汗症(しゅしょうたかんしょう)を知っていますか

緊張すると手のひらに汗をかくという経験は、どなたにもあると思います。

でも、緊張をしてもいないのに、しかも何が原因かもわからず、手のひらに汗をかいてしまう、そんなことを想像すると、ちょっと大変だと思いませんか?

手掌多汗症というのは、まさにそういう「疾患」のことをいいます

実は私も、この手掌多汗症に悩まされています。

このあと書いていきますが、私見では手のひらの汗の辛さは、内的苦痛(触る物が濡れる、滑りやすい、手足が冷える、等)と外的苦痛(手と手が触れたときに相手に不快感を与えてしまう、等)に分けられると思います。

この記事は、手掌多汗症を当事者以外に知っていただくことで、当事者の「外的苦痛」を少しでもやわらげる機会になれば、と思って書くことにしました。

「恥ずかしい」「隠したい」

まず、多くの手掌多汗症当事者が、自分が手掌多汗症であると気づくのは、年齢的にかなり遅いはずです。

なぜなら、手のひらの汗というのは、程度の差はあれ誰でもかくものですし、常に他人と比べる機会があるものでもないので、多少それが多くても、異常とまでは思いにくいのです。

場合によっては、「自分は緊張しやすい」などと別の理解をしてしまうこともあると思います

そして、子供は家庭から保育園・幼稚園・学校という、他人に囲まれた「社会」に出るわけですが、そこでは手掌多汗症などまったく前提としないイベントが待ち受けているわけです。

フォークダンス、握手、ペーパーテスト、楽器演奏、等々…

何を言っているのかわかりませんか?

フォークダンスや握手は、相手の手を握った瞬間、子供のことですから、ストレートに「気持ち悪い!」と言われることもあります。

これは口に出さないだけで、握った相手の手が濡れていたら、気持ち悪いのは大人でも同じですよね。

ペーパーテストは、紙が汗でべちょべちょになり、最悪の場合は破れてしまいます。

楽器演奏は、汗で金属部分が錆びてしまいます。

そして、そのたびに子供ながらに傷ついて、「自分は気持ち悪いんだ」「恥ずかしい」と思うようになり、何とかそれを隠そうとするのです

手掌多汗症の当事者は、それを隠すプロ

当事者にとっては毎日のことですから、手掌多汗症を隠す技術は、それなりにレベルの高いものになっていきます。

握手であれば、直前にハンカチやポケットの中で汗を拭き取ることで、相手に「ちょっと緊張してるのかな?」という程度までに、瞬間的には汗を抑えることはできますし、ペーパーテストは、手の下に定規を敷いて、定規の上にたまった汗を定期的に拭き取る、などという技術を身に着けていきます。

でも、楽器演奏などはどうにもなりませんし、私の場合はギターがひきたくて練習したのですが、弦がすぐにサビてしまうので諦めました。

おそらく、スポーツでも、内容によっては手掌多汗症が原因で諦めざるを得なかった方は少なくないと思います。

例えば、ボルダリングは手が滑ってしまいますし、器械体操、とくに鉄棒なんかも絶対ムリだと思います。

そんな経験をしながら、徐々に自分は他の人と違うのでは?と自覚するようになり、今ならネットで調べることが多いのではないでしょうか。

そして、自分の症状が「手掌多汗症」という「疾病」であると知るわけです。

しかし、それを知ったからといって、そのままでは何の解決にも結びつかないというというのが、この疾病の悲しいところです。

「原発性局所多汗症」について全国でアンケートをおこなったある調査によれば、手のひらの罹患率は5.33%といいますから、約20人に1人は手のひらの汗で悩んでいることになります。

CHECK!原発性局所多汗症診療ガイドライン 2015 年改訂版(日本皮膚科学会ガイドライン)

しかし、日常生活をしていて、自分以外に手掌多汗症の人に会うことなど、ほとんどないでしょう。

それは、手掌多汗症の当事者がそれを隠して、周囲に手掌多汗症であることを知られないように日常生活を送っているからなのです。

「いない」のではなく、「見えていない」だけなのです。

そして、手掌多汗症の当事者は、程度の差はあれ、みな苦しんでいます。

治療法は確立されていない

手掌多汗症は「疾病」であり、疾病である以上は治療の対象であるはずですが、現在のところは、塗り薬や内服薬で症状を若干緩和するか、あるいは、胸部交感神経遮断手術(ETS手術)で脇の神経を切断するという外科的な手法に頼るしかありません。

このETS手術は、手のひらの汗は完全に止まりますが、必ず代替性発汗という合併症で、これが酷い場合は上半身が常に汗だくになる人もいるようです。

しかも、一度切ってしまった神経は元に戻せないので、酷い代替性発汗が出た場合には、一生その体と付き合っていくことになります。

これでは、怖くてETS手術に踏み切ることはできません。

このような状況なので、最近ではネットで、困った当事者の弱みにつけこんで、効果が疑わしい、怪しい商品が多数販売されるようになってきました。

当事者の一人として、このようなビジネスをする会社に対しては、言いようのない怒りを覚えます。

手掌多汗症のつらさ

苦痛には種類がある

ここまで書いてきたことは、当事者であれば、ネットで調べて知っていることばかりです。

当事者でない方も、一度「手掌多汗症」でネット検索していただければ、おそらくそのヒット数に驚かれると思います。

冒頭に書いたとおり、手掌多汗症の苦痛は、大きく分類して、一人で過ごしていても感じる「内的苦痛」と、他人と接するときに感じる「外的苦痛」に分けられると思います。

内的苦痛の例は、

  • 触る物が濡れる(乾くと跡が残る)
  • 手が滑る
  • 手足が冷える
  • 靴が臭くなりやすい

外的苦痛の例は、

  • 触る物が濡れる(濡れた状態を見て驚かれる苦痛)
  • 握手したときの相手の反応が怖い
  • 恋人と手を繋ぐことに抵抗を感じる
  • セックスに支障がある(相手の体を触るので)

内的苦痛は「割り切って生きる」

私の場合、内的苦痛は、いろいろと不便ではありものの、そういうものと割り切って行きていくしかないと考えています。

少なくとも、代替性発汗のリスクをともなうETS手術に踏み切るような気持ちにはなれません。

当事者にとっては、毎日が手掌多汗症なわけですから、それなりに付き合う方法も持っているはずです。

私の場合は、なぜかソックスを履くと、手のひらの汗がある程度おさまるという謎の反応があるので、部屋のあちこちにソックスを置くようにしています。

それでも抑えられないときは諦めますが、触れた物に着いてしまった汗が乾いて塩をふいたようになってしまわないよう、すぐに拭き取るための布巾やウェットティッシュを置くようにしています。

最大の外的苦痛は「握手」

一般的な日本人の社会生活であれば、他人と直接、身体的な接触をすることはあまり多くないと思います。

恋人や夫婦など、親密な関係になれば接触が多くなりますが、そのような長期的な関係であれば、多汗症について十分に説明して理解を求めることは可能でしょう

恋人や夫婦以外との接触の機会といえば、やはり「握手」です。

握手というのは、多くの場合、突然相手から手を差し出されて求められます。

そして、それを断ることは、敵意のあらわれか、そこまでではなくも、かなり失礼な行為になります。

このとき、手掌多汗症当事者の頭の中では、相手は手掌多汗症のことなど知るわけもないし、握手を断るにしても、相手に手を差し出させたまま言い訳をすることになる・・・

だったらもう、気持ち悪いと思われても仕方ないので握手してしまえ、ということで手を握り返すしかないのですが、多くの場合は予想どおり「うっ」という感じの反応をされてしまうわけです。

相手によって、「汗がすごいですね」と言う人もいますし、無言で我慢する人もいます。

いずれにしても、手掌多汗症の当事者は、その一回一回で、少しずつ心に傷を負っていくのです。

おねがい

手掌多汗症の当事者としての本音を言えば、握手などこの世からなくなれ、と思っています

しかし、現実にはそうもいきませんから、当事者以外の方にお願いしたいのです。

握手をしたときに、相手が多汗症だと気づいたら、できれば表情などを変えずにやりすごしてほしいのですが、もし、反応してしまったら、「気にしないでください」などと声をかけてほしいのです

その言葉で、手掌多汗症の当事者は、相手が手掌多汗症についての知識があることがわかりますし、何より、「気持ち悪い思いをさせてしまった」という当事者の自責の念は、かなりやわらぐはずです

もっと高い水準の要求が許されるなら、商談などの最後に握手をする場合は、おそらく当事者は、商談の間も手のひらの汗を隠すために何らかの行動をとっているはずですから、これに気づいたら、握手を求めるのは控えていただきたいです

20人に1人の人が悩んでいる、手掌多汗症という疾病に、ぜひご理解をお願いします。

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ABOUTこの記事をかいた人

そうたろう

FXと節約を組み合わせた記事を書いています。 元会社員、元会社経営者にして元浪費家。現在はフリーランスで生計を立てています。もっと早くお金の正体に気づいておけばよかったな〜などと後悔しながらも、あとの祭り的人生をそれなりに楽しんでいます。