来るべき円高に向けて
昨年11月からのトランプ相場でかなりの円安になりましたが、外国為替レートは、一定のレンジを行ったり来たりするので、また必ず円高になります。
そして、急激に円高が進んだ翌日に起こる現象として、銀行や金券ショップに行列ができる、というものがあります。言うまでもなく、レートが有利なうちに、円を外貨に両替しようということなのですが、かなり長時間並ぶことや、米ドルが品切れなどということも珍しくありません。すぐに外貨を現金として使う予定があるなら仕方ないのですが(それでも外貨宅配を使えば、行列に並ぶ必要はありませんが…)、とりあえず外貨にしておいて、円安になったときに使おう、という目的の方なら、ネットバンキングの外貨預金やFXのほうが、手間・時間・費用・適時性などの面で効率よく目的が果たせます。
皆さんがやろうとしていることは、「外国為替リスクのヘッジ」です
なぜ円高の直後に外貨を買い求めるのか?
要するに、「円高で手に入れた外貨を、円安になったときに使って得な気分を味わいたい」ということですよね?円高になった直後に米ドルを買い求めるということは、つまり、「また円安に戻るかもしれない」と思っているからですよね?たしかに、2016年の夏は1米ドル=100円くらいでしたから、このときドルを買っておいて、1米ドル=113円の現在、例えばドル建てで1,000ドルの買い物をすれば、1万3000円分も得をすることになります。実は、銀行やファンドのディーリングルームで日々おこなっていることも、本質的にはこれと同じです。ただ、金融業界ではカッコつけて「為替変動リスクのヘッジ(回避)」なんて呼んでいるだけです。何兆円なんていう規模のおカネを日本円だけで持っているなんていうのは、それだけで巨大なリスクですから、損をしないように常に外貨や債券なんかに分散させる必要があるんですね。これを
- 現金でおこなうのが「両替」
- 現金だが銀行の口座の中でおこなうのが「外貨預金」
- 証拠金を預かり、決済時までに発生した価格変動だけを清算するのが「外国為替証拠金取引(FX)」
大きく違ってくるのは手数料
①と②の差は、現金書留と銀行振込の差に似ています。現金でのやりとりは不便だし、盗難や紛失のリスクもある、という理由から利便性を高めたのが銀行振込なので、振込手数料は、現金書留よりは安いですが、今でもけっこう高いですよね?
外国為替も同じで、両替の利便性を高めたのが外貨預金なので、手数料は店頭よりは安いとはいえ、けっこう高めです。米ドルを例にすると、メガバンクはだいたい片道1円/ドル、業界最安水準のソニー銀行でも15銭/ドルです。銀行や金券ショップでの両替手数料が2〜3円/ドルなので、それよりは安いのですが、これって、FXをやっている人からしたら、はっきり言って「ありえないくらい高い」手数料なんです。
FX取引会社のスプレッド(実質的な手数料)相場
③の「外国為替証拠金取引(FX)」では、現在、ほとんどの取引会社において「手数料」ではなく、売値と買値の価格差(スプレッド)のみを事実上の手数料とする場合が多いのですが、業者間で競合の激しい米ドルの場合、このスプレッドは、0.3銭/ドルくらいが業界標準です。1銭/ドルを超えると「高い」と言われてしまいます。
FXの手数料がそんなに安いなら・・・
そもそも現金の取扱いというのは、企業にとって非常に大きなコスト要因ですから、ユーザーが最終的に現金(紙幣・貨幣)を受け取ろうとしているかぎり、1,000ドルあたりざっくり2,000〜3,000円のコスト負担からは逃れられません。これだけは念頭に置いていただきたいです。実際にいくつかのFX取引会社は外貨両替にも対応していますが、手続きが面倒なうえに「リフティングチャージ」等の名目で、結局店頭の両替とあまりかわらない手数料がかかってしまいます。
FXは危険?
そしてFXの場合、現在レートが1米ドル=113円と仮定して、1,000ドルを買うと、口座からは1,000×113=113,000円が引き落とされるのではなく、もっと金額の少ない「証拠金」というものが「拘束」されます。この証拠金の金額はFX取引会社によって違うのですが、私がオススメしているSBI FXトレードでは、1,000ドルだと約4,530円です。ドルを買った後でも、口座には証拠金を差し引いた115,470円がそのまま残っていますし、なんなら引き出すこともできます。そうです。お察しのとおり、FXでは、もっとドルが買えてしまうんです。具体的には、入金額の25倍まで買えます。25倍というと2万5000ドル(282万5000円)ですから、レートが1円上下すると、利益または損失も2万5000円ということです。12万円程度の入金だと、少しの下落であっという間に「ロスカット」といって、強制的に決済され、証拠金部分以外は没収です。でも、12万円の入金で1,000ドルを買うだけなら、1米ドル=1円(あり得ませんが)になってもロスカットされないということです。
この20年間ほどの米ドル円為替レート変動を見ると、1ドル120円を超えると高く、100円を下回ると安い、というおおまかな傾向くらいは見て取れます。それでも、2008年に米ドルが100円に下がったときも円高チャンスと思って銀行に行列している人をたくさん見ましたが、努力も虚しく、その後6年間くらいはいつ使っても損失が出るという苦い思いをしたでしょう。ただ、銀行や金券ショップで行列までして損するよりは、ネット銀行の外貨預金やFXで損したほうが精神的な打撃は少ないと思いますが・・・。
外貨は「使わないと利益が確定しない」
外貨の現金は、使うタイミングを選びにくい
現金で外貨に両替してしまうと、いくら円安になっても、その外貨で買い物をするまでは利益が確定しません。しばらく海外旅行に行かない間に円安が終わって再び円高になるなどという話は珍しくありません。これを避けるには、円安のときに再び外貨を日本円に両替するという方法がありますが、この記事で見てきたとおり、再度現金両替で2〜3円/ドル、外貨預金で0.15〜1円/ドル程度のコストを負担しなければなりません。
この点、平日ほぼ24時間取引可能なFXなら、円安になったと判断したときにパソコンやスマホで数クリックして「決済」すれば、その時点で清算されて日本円として口座に入金されますから、現金に比べてタイミングは逃しにくいですし、清算され口座に戻されたおカネを使わないうちに円高に戻ったら、また外貨を買っておけば良いですね。1,000ドルの取引にかかる手数料なんて3円程度(片道はその半分)と、両替や外貨預金の手数料と比較すればわずかな金額ですから、何度売買を繰り返しても気になりません。
それぞれの役割があります
ここまで見てきたとおり、両替、外貨預金、FXには、優劣ではなく、それぞれ役割があり、ニーズによって賢く使い分ける必要がある、ということだと思います。その意味では、すぐに使いもしない外貨に行列までして現金で両替するというのは、かなり最悪な利用方法だということがわかっていただけたかと思います。また、少なくとも、外国為替のリスクヘッジ手段として最も低コストであるFXを避けてしまうのはもったいないですね。SBI FXトレードでは、無料で口座開設して初回ログインするだけで500円が入金されるキャンペーンも実施されています(3月1日まで→4月1日まで延長されています)。