リピート発注の天敵はフラッシュ・クラッシュ
常にポジションを保有する宿命
リピート発注は、裁量取引とは違い常にポジションを保有しているため、1月3日のフラッシュ・クラッシュのような相場の急変が発生した場合には、「必ず」その影響を受けることになります。
裁量取引であれば、理由は偶然でも何でも、ポジションさえ持っていなければ影響を受けませんからね。
その意味では、店頭FX取引会社ごとに差があるロスカットルールは、裁量取引より慎重に検証する必要があると、今回の一件であらためて実感しています。
ロスカットルールに絶対的な有利・不利はない
ロスカットルールには、証拠金維持率が100%を下回ると即時に執行されるものから、証拠金維持率が100%を下回っても、一定の割合以上の証拠金維持率をキープしていれば、判定時刻までの間にレートが戻ったり、追加の証拠金を入金するなどで100%を上回っていればロスカットが執行されないというものまで、いろいろなパターンがあります。
そして、これらのロスカットルールには、全てのトレードにおいて絶対的に有利・不利という評価はできないということは、あらためて認識しなければなりません。
例えば、上の図で見ると、先日(1月3日)のフラッシュ・クラッシュでは、緑の矢印のパターンで急落した後にすぐ戻りましたが、赤の矢印のパターンで、回復しないまま、さらに下落していくというパターンもあるわけです。
緑の矢印のパターンでは、ロスカットさえされなければ、その後は証拠金維持率が100%を上回っているのですから、ロスカットは証拠金維持率が0%近くになるまで執行されないロスカットルールのほうが有利であり、100%を下回るとすぐに執行されるロスカットルールは不利です。
逆に、赤の矢印のパターンでは、ロスカットは証拠金維持率が100%を下回った時点ですぐに執行されるロスカットルールのほうが、ロスカット後に口座に残る資金が多くなり、0%近くになるまで執行されないロスカットルールの場合は、ロスカット後に口座に残る資金が少なくなるばかりではなく、下落のスピードが早すぎる場合は、0%水準でもロスカットが約定されず、口座資金がマイナスになる=追証を支払う必要がある、という最悪の事態も考えられます。
つまり、ロスカットルールは、ユーザーにとってケース・バイ・ケースで有利に働く場合も、不利に働く場合もある相対的なものであるということは、あらためて確認しておく必要があると思います。
FX取引会社ごとのロスカットルール
リピート発注ができる取引会社は7社
現在、いわゆるリピート系の発注ができるFX取引会社は、当ブログでもご紹介している「ループイフダン」のアイネット証券のほか、元祖である「トラリピ」のマネースクエアや、「オートパイロット」のインヴァスト証券など7社あり、まずロスカットの執行基準を証拠金維持率で並べると、以下のようになります。
外為オンラインは、ユーザーがロスカットラインを選ぶことができるため、2ヶ所に表示しています。
ロスカットルールは、取引会社各社ごとに細かなルールが定められていますので、それぞれ詳細を見ていきます。
アイネット証券・ひまわり証券
この2社は、基本的に同じシステムである「ループイフダン」でリピート発注を提供しており、ロスカットルールについても同じ内容になっています。
有効証拠金が取引証拠金の100%を割ると自動的にロスカットされます。
(アイネット証券「ループイフダン取引要綱(個人用)」)
また、ループイフダンでは、ロスカットルールとは別に、ユーザーが設定した任意の損失額に到達した後に、全ての保有ポジションが決済され、全ての稼働している売買システムが停止される「マイセーフティ」という機能を用意しているため、証拠金維持率が100%以上でも、あえてロスカットすることで、急落時でも多くの資金を残すという設定も可能です。
外為オンライン(L25R、L25Rmini)
アイネット証券・ひまわり証券と同じISホールディングスである外為オンラインでは、「iサイクル注文」でリピート発注が可能になっています。
外為オンラインでは、ユーザーが2種類のロスカットラインを選択することが可能となっており、「L25R・L25Rmini」コースでは証拠金維持率が100%、「L25・L25mini」コースでは20%を下回ると即時ロスカットされますが、「L25・L25mini」コースでは、20〜100%の範囲であれば、6:45(米国サマータイム時は5:45)時点で証拠金維持率が100%を上回ればロスカットされません。
ロスカットが行われるタイミング(ロスカット値)は、外為オンラインの場合、2つのコースでそれぞれ設定されています。
L25Rコースではロスカット値が取引証拠金×100%、L25コースではロスカット値は取引証拠金×20%です。 このロスカット値、取引証拠金×100%と×20%の違いを説明します。
(外為オンライン「ロスカットと証拠金判定」)
マネースクエア
マネースクエアは、リピート系発注の元祖である「トラリピ」を提供しています。
トラリピでは、「自動ロスカット」と「東京15時ロスカット」でロスカット判定をおこなっています。
「M2JFX」では、時価残高に対して維持率が『80%』を下回っていた場合、自動ロスカットになります。
(マネースクエア「M2JFXの自動ロスカット」)
「M2JFX」では、祝日を含む毎営業日15時時点で時価残高に対して維持率が『100%』を下回っていた場合、東京15時ロスカットの対象になります。
(マネースクエア「M2JFXの東京15時ロスカット」)
証拠金維持率が80%を下回った場合には即時ロスカット執行、15:00に証拠金維持率が100%を下回っていた場合にもロスカット執行、というロスカットルールです。
リピート系取引会社各社の中で、証拠金維持率の判定が東京時間の日中におこなわれるのは、唯一マネースクエアということになります。
YJFX!
YJFX!では、「リピートトレール注文」を用意しています。
ロスカットの執行:証拠金維持率が50%を下回ったとシステムが検知した時点で、ロスカットが執行され、すべてのポジションが決済されます。
(YJFX!「維持率とロスカットについて」)
さらにYJFX!は、NYクローズ時(7:00、サマータイム適用時6:00)に証拠金維持率判定をおこない、100%を下回っている場合は、当日の24時までに「預託金等の入金」あるいは「ポジションの決済」によって100%以上にしなければ、全ポジションがロスカットされます。
証拠金維持率を100%以上にする方法としては、上記の2つに限定されており、レート変動による評価益の増加はこの対象とならないということには注意が必要です。
追証を解消する為には、2種類の方法があります。
①入金
実預託額が維持証拠金額を上回るよう追証金額分の入金を行う事で、追証を解消します。預託金や、決済による確定益、受取スワップポイント、キャッシュバック金額等全ての入金が対象となります。
②ポジションの決済
維持証拠金額が実預託額を下回るまでポジションを決済する事で、追証を解消します。
なお、レート変動による評価益の増加は対象となりません。
追証発生日の24時までに、追証が解消されなかった場合は、順次全てのポジションが強制決済されます。
(YJFX!「追証と強制決済について」)
インヴァスト証券
インヴァスト証券では、「オートパイロット」でリピート発注が可能です。
オートパイロットでは、証拠金維持率が50%以下になると、即時に全ポジションがロスカットされます。
損失が拡大し、有効比率が50%以下(法人のお客様は100%以下)の場合、お客様の意思にかかわらず、すべての建玉を反対売買により自動決済(ロスカット)します。
(インヴァスト証券「アラート・ロスカットルール」)
50〜100%の証拠金維持率判定は、月〜木は6:40、金は6:00(サマータイム時:月〜木は5:40、金は5:00)におこなわれ、翌日2:00までに「不足金額分の入金」または「全ての建玉の決済」のいずれかで証拠金維持率を100%以上にする必要があります。
1.一日の取引終了時に有効証拠金額が必要証拠金額を下回ると証拠金不足が発生し、全ての自動売買注文が稼働停止します。
2.翌営業日26時(深夜2時)までに不足金額分の入金または全ての建玉の決済が必要です。
当社での確認後、自動売買注文を稼働できるようになります。
3.翌営業日26時(深夜2時)までに当社で入金が確認できない場合、保有している全ての建玉を強制決済いたします。 決済後に新規取引規制は解除されます。
(インヴァスト証券「2つのリスク管理ルール」)
入金ができない場合、YJFX!であれば一部のポジションを決済することで証拠金維持率を100%以上にすることも認められていることと比べると、インヴァスト証券は全てのポジションを決済しなければロスカットの対象となる点では、厳しいルールであると言えます。
また、YJFX!と同様、レート変動による評価益の増加での証拠金維持率100%回復は認められません。
取引時間中の相場変動により有効証拠金額が回復した場合でも、前日証拠金不足額以上のご入金もしくは全ての建玉の決済をいただかないと不足の解消にはなりません。
(インヴァスト証券「取引終了時に有効証拠金額が必要証拠金額を下回ると発生」)
マネーパートナーズ
マネーパートナーズでは「連続予約注文」で、文字通りリピート発注が可能です。
連続予約注文では、証拠金維持率が40%を下回ると、即時に全ポジションがロスカットされます。
純資産評価が行われた時点で純資産額が建玉必要証拠金の40%以下の場合、全ての未決済建玉が自動的に決済されます。
(マネーパートナーズ「ロスカット」)
40〜100%の証拠金維持率判定は、「各営業日終了時点」(月〜木は6:55、金は6:50、サマータイム時:月〜木は5:55、金は5:50)におこなわれ、18:00までに「追加証拠金額以上の入金」または「未決済ポジションの一部または全部の決済」によって証拠金維持率を100%以上にする必要があります。
YJFX!、インヴァスト証券同様、レート変動による評価益の増加での証拠金維持率100%回復は認められません。
※営業日終了時点での証拠金維持率が100%未満の場合に追加証拠金が発生します。追加証拠金が発生した場合は、追加証拠金額を充当するために、追加証拠金額以上のご入金(振替・移動)もしくは未決済ポジション(建玉)の一部または全部の決済を当社が定めた時刻(18時)までに行ない、追加証拠金を解消していただく必要がございます。
※未決済ポジションの評価益の増加による追加証拠金の解消はできません。
(マネーパートナーズ「追加証拠金制度について」)
外為オンライン(L25、L25mini)
すでにご紹介しましたが、こちらのコースでは証拠金維持率が20%を下回ると、即時に全ポジションがロスカットされます。
20〜100%の証拠金維持率判定は、6:45(サマータイム時:5:45)におこなわれ、100%を下回っている場合には、即時に全ポジションがロスカットされます。
L25コースでは、上記で説明したロスカットと、もうひとつ「証拠金判定」というルールがあります。
証拠金判定は1日に1回、決められた時間に判定されます。判定時刻は通常、朝の午前6時45分で、米国がサマータイムを適用しているときは、朝の午前5時45分となります。
判定時に必要な証拠金は、その日の取引証拠金以上が必要です。
取引証拠金が32,000だった場合、朝の証拠金判定時刻に、 有効なご資金が、32,000円をして下回っていたら強制決済されます。
L25コースは、ロスカット値は取引証拠金の20%と低いですが、この証拠金判定があるのが特徴です。
(外為オンライン「証拠金判定 L25、L25miniコースの場合」)
まとめ
一覧にしました
以上をざっくりと表にまとめると、このような感じになります。
ここに言う「追証制度」とは、「証拠金維持率判定時に100%を下回っていても、決められた時間までに入金その他の方法で100%以上にすればロスカットされない」ことを言い、追証制度がない場合は、判定時に証拠金証拠金が100%を下回っている場合は即時全ポジションがロスカットされます。
即時ロスカット | 証拠金不足判定 タイミング | 追証制度 | 追証解消方法 | |
---|---|---|---|---|
アイネット証券 ひまわり証券 | 100% | ― | ― | ― |
外為オンライン L25、L25R | 100% | ― | ― | ― |
マネースクエア | 80% | 15:00 | なし | ― |
YJFX! | 50% | 7:00(ST6:00) | あり:当日24時まで | 入金 一部または全ポジション決済 |
インヴァスト証券 | 50% | 月〜木6:40(ST5:40) 金6:00(ST5:00) | あり:翌日2時まで | 入金 全ポジション決済 |
マネーパートナーズ | 40% | 月〜木6:55(ST5:55) 金6:50(ST5:50) | あり:当日18時まで | 入金 一部または全ポジション決済 |
外為オンライン L25、L25mini | 20% | 6:45(ST5:45) | なし | ― |
ロスカットルールで選ぶリピート発注
この記事で見てきたように、ロスカットルールについては、取引会社によってかなりの差があります。
リピート発注を提供する取引会社を比較する場合、どうしてもその取引コストに目が奪われがちですが、ロスカットを大切な資産を守るための「命綱」と考えると、もう少しこの点を重視して選んでも良いのかもしれません。
このまとめが、皆さまのご参考になれば幸いです。
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