FTSE100の週終値は7471(前週終値比-9)
終値は先週よりやや上昇
FTSE100の日足チャートです。
この週は、これまで膠着状態だった英EU離脱交渉が大きく進展し、その情報が伝わる過程で、かなり荒っぽい値動きとなりました。
くりっく株365のFTSE100は、週の高値7537・安値7404でしたが、終値は毎度の横ばい推移で、英ポンド安を背景に、わずかに上昇という結果になりました。
FTSE100と英ポンド米ドル・今週の振り返り
この週のFTSE100を、英ポンド米ドル相場も参照しながら、時間足で追ってみたいと思います。
12日(月)の英ポンドは、前週終値の1.2960から下に窓を開けての1.2912で寄り付いた後、東京時間の昼にかけてやや上昇するものの上値が重く、欧州時間なかばにかけて1.2826まで下落します。
欧州時間から断続的に伝えられた英EU離脱関連報道に反応して神経質な値動きが続きますが、結局は様子見が優勢で終値は1.2849。
FTSE100は、前週終値の7478から上に窓を開けて7523で寄り付き、いきなり週の高値である7537まで上昇します。
しかし、その後はほぼ下落の一途で、7424での引けとなります。
この日に伝えられた英国関連ニュース
- 英4閣僚辞任の可能性(英サンデータイムズ紙)
- ブロードベントBOE(英中銀)副総裁発言「ブレグジットの不透明感が生産性と投資に影響を与えている」「ブレグジットの結果いかんによって、利上げも利下げもあり得る」
- 英首相報道官「他の閣僚から辞任の意向は示されていない」「議論すべきことがあればいつでも閣議をおこなう」「EU離脱交渉は継続している」「アイルランドのバックストップを解決することが依然として大きな課題」
- 英首相報道官「バルニエ首席交渉官についてのFT紙報道(「主要項目が13日にも英内閣に示される準備が整った」)には懐疑的」
- メイ英首相発言「ブレグジット交渉は現在、大詰めを迎えている」「ブレグジット交渉は極めて厳しい」「ブレグジット交渉は非常に困難」


13日(火)の英ポンドは、英EU離脱交渉が近日中に合意に達する見込みと伝えられるようになり、英ポンドに対する過度なリスク回避がやや和らいだことで、英ポンドがほぼ終日買い戻されます。
高値はNY時間1時台の1.3045でその後は売られますが、1.2970水準はキープしました。
英ポンド上昇もFTSE100は寄りの7455から引けの7447までほぼ横ばい商状となり、「嵐の前の静けさ」を思わせます。
この日に伝えられた英国関連ニュース
- ラーブ英EU離脱担当相ほか閣僚、メイ首相が提示している離脱合意案は受け入れがたい、超えるべきでない線を2つ踏み越えたこの案を受け入れるよりも、合意なき離脱に備えるべきとメイ首相に伝える見通し
- リジントン英内閣府相「合意は48時間以内に可能」(英テレグラフ紙)
- 英ILO失業率10月2.7%(予想2.6%)9月4.1%(予想4.0%)
- 英政府筋「ブレグジット合意に前日よりも近づいている」「バックストップに関する文書作成を今日完了できる」(ロイター通信)
- メルケル独首相発言「英EU離脱は深い痛手」
- 明日、メイ首相が英EU離脱に関する臨時閣議を開催するよう要請した(ブルームバーグ)
- ハント英外務相発言「ブレグジット交渉がいつ合意にたどり着くのかわからない」「95%は合意しているが、残り5%で難航している」
- ラーブ英EU離脱担当相「ブレグジット交渉の進展に自信がある」
- 14日14時にEU離脱の協定草案について協議するもよう(一部報道)
- イアン・ダンカン・スミス元英保守党党首発言「もしブレグジット合意内容が報道通りなら、メイ内閣は長続きしないだろう」


14日(水)の英ポンド米ドルは、東京時間前から、ラーブ英EU離脱相らの閣僚がメイ首相の合意案にしぶしぶ合意するとの見通しが伝えられたことで、再び1.30台に上昇します。
その後は情報が錯綜する中で、20時台には1.2885、3時台には1.2882まで下落する場面もあり、神経質な値動きが続きます。
FTSE100は、7422で寄り付いた後にやや下落するも、直後に英ポンド米ドルの大幅下落を背景に上昇し、その後の英ポンド買い戻しでは下落するという逆相関となります。
23時台には週の高値水準である7532まで上昇しますが、NY時間では下落し、この日は7440で引けます。
この日に伝えられた英国関連ニュース
- 英国EU離脱問題に関して、英内閣で離脱合意に関する草案が合意された場合、25日にも会合を行う(ロイター)
- メイ首相が提出するEU離脱案に関し、ラーブ英EU離脱担当相、ハント英外相、シャビト内相ら複数閣僚は不満を示しながらも合意を認める見込み(英サン紙)
- 英消費者物価指数(10月)前月比0.1%(予想0.2%)、前年比2.5%(予想2.4%)、コア前年比1.9%(予想1.9%)
- 英生産者物価指数(10月)仕入前月比0.8%(予想0.6%)、仕入前年比10.0%(予想9.6%)、出荷前月比0.3%(予想0.2%)、出荷前年比3.3%(予想3.1%)、出荷コア前年比2.4%(予想2.4%)
- メイ英首相発言「ブレグジット合意はEUとの摩擦なき貿易を確かにするだろう」「再び国民投票を行うことはないだろう」「バックストップ措置は一時的でなければならない」「草案は議会に支持されるだろう」
- メイ英首相、EU離脱協定を閣議了承
- メイ首相に対する不信任投票を呼びかける議員もいる(BBC)
- 英内閣2閣僚が辞任の可能性(一部報道)


11月15日(木)の英ポンド米ドルは、東京時間にやや買い戻され15時台には1.3029まで上昇します。
しかし、欧州時間序盤にラーブ英EU離脱相の辞任が伝えられると英ポンドは急落し、英ポンド米ドルで19時台には、一気に1.2749まで下落します。
その後も戻りらしい戻りもなく、3時台には週の安値となる1.2722をつけた後はわずかに買い戻され、1.2759で引けます。
FTSE100は、ラーブEU離脱担当相辞任で混乱が広がる中で7471で寄り付き、初期反応としては英ポンド安を背景に、一時7501まで上昇します。
しかし、その後は大幅な英ポンド下落も支援材料としては不足となり、下落から横ばいとなります。
NY時間にもブレグジット関連の報道が伝えられると英ポンドが神経質に反応し、FTSE100が逆相関の反応といういつものパターンを見せますが、上値も限定的で4時台の7524止まりとなり、その後7475で引けています。
この日に伝えられた英国関連ニュース
- EU、11月25日に英EU離脱に関するサミット会議を実施
- ラーブ英EU離脱担当相が辞任
- マクベイ英労働・年金相が辞任
- 英小売売上高(10月)前月比-0.5%(予想0.2%)、前年比2.2%(予想2.8%)
- メイ英首相発言「アイルランドに関するバックストップなしではEUは決して合意しない」
- コービン英労働党党首発言「メイ首相は”生焼け”のブレグジット合意の撤回を」
- 英EU離脱強行派の議員、保守党党首の不信任投票を要求
- ゴーブ英環境相が今晩辞任するようだ(英タイムズ紙)
- ゴーブ英環境相はEU離脱担当相のポストを拒否したようだ(英タイムズ紙)


16日(金)の英ポンドは、前日一連のネガティブな材料をようやく織り込み、やや買い戻しが入りますが、1.28台乗せがやっとという状況で、非常に戻りが鈍いまま欧州時間に入ります。
欧州時間では徐々に英ポンド買い戻しの動きが強まり、ロンドンフィクス前後には1.2871まで上昇しますが、とりあえずここが前日急落後の上限となり、その後は売られて1.2822で引けています。
英ポンドは7468で寄り付き、一瞬上昇しますが売られて、21時台には7404まで下落します。
その後は買い戻されて一時7503をつけますが、結局、週の引けは7471となりました。
この日に伝えられた英国関連ニュース
- メイ英首相発言「昨日のゴーブ紙との会談は良い内容だった」「次期EU離脱担当相はまだ決めていない、数日中には決める」「引き続きDUP(民主統一党)と協力する」
- ゴーブ英環境相は辞任を思いとどまることを決心(英タイムズ紙)
- 英首相報道官「EU離脱担当相の権限を制限し、メイ首相自らが交渉を主導する方針」
- 新EU離脱担当相に、保険担当閣外相のステファン・バークレー氏を指名


週足チャート
週足チャートで確認すると、週明け上に窓を開けて寄り付いたので上昇しているように見えますが、足としては陰線となっています。
英ポンド相場がこれだけ荒れ狂っても、「どこ吹く風」とばかりに横ばいのFTSE100は実に不気味ではありますが、為替よりも株のほうがEU離脱のネガティブな材料を織り込んでいたという理解でいけば、納得できる範囲ではないかと思います。
ただ、この先、英ポンドが買い戻される過程ではFTSE100に下落圧力がかかることになりますから、それを通過してはじめて、現状でのニュートラルなFTSE100の価値が見えてくるのではないでしょうか。
今週発表される英国経済指標
英国関連の指標発表はほとんどありません。
- 19日(月)…ライトムーブ住宅価格
- 21日(水)…公共部門ネット負債
年初来の配当と支払金利
FTSE100は支払金利がふたたび30円台/日に
1/2〜11/16 | 受取配当 | 支払金利 | 差引利益(A)※括弧内は前回 | 必要証拠金(B) | A÷B ※括弧内は前回 |
---|---|---|---|---|---|
FTSE100 | 28,990円 | 7,090円 | 21,900円(20,544円) | 26,000円 | 84.23%(79.02%) |
NYダウ | 50,006円 | 53,129円 | ▲3,123円(▲3,532円) | 83,000円 | ▲3.76%(▲4.26%) |
日経225 | 37,184円 | 0円 | 37,184円(37,184円) | 76,000円 | 48.93%(48.93%) |
DAX | 0円 | 1,202円 | ▲1,202円(▲1,202円) | 42,000円 | ▲2.86%(▲2.86%) |
年初から先週までの受取配当から支払金利を差し引いた実利益を計算しています。日経225・DAXは前週と変わらずです。
NYダウは、ややマイナス幅を縮めています。
FTSE100は、この週はまた支払金利が23円/日に下落し、実利益も順調に伸びています。
英EU離脱交渉は波乱の進展
マーケットはラーブEU離脱担当相辞任に最も大きな反応
これまで膠着状態が続いていた英国のEU離脱交渉は、離脱条件に関する協定案への暫定合意という形で、大きく進展しました。
英政権閣内での承認も経て安心感が広がったところに、ラーブ離脱担当相の辞任が伝わったため、閣内でもさらに離反があるのではないか、さらには、このままでは議会承認も難しいのではないか、などという懸念が一気に広がり、初期反応として英ポンドが大きく売り込まれたということなのでしょう。
ラーブ氏にそこまで強力な権限が集中していたわけではないのですが、同じ轍を踏まないためにも、メイ首相は担当相の権限を縮小し伴食大臣化した上でバークレー氏を指名し、今後は自らが主導権を握ることでリスクを回避しようとしています。
コーブ環境相が辞任を思いとどまったことがこの週唯一の朗報と言えますが、閣内にもまだまだ不協和音がくすぶっていることを露呈したメイ内閣の痛手は計り知れません。
アイルランド国境をめぐる「バックストップ」とは
メイ首相が言うように「アイルランドに関するバックストップなしではEUは決して合意しない」でしょう。
離脱後唯一の陸続き国境となる北アイルランド・アイルランド間では現在、国境が設けられておらず貿易も自由ですが、離脱後は原則として国境を設け、人や物の流れを制限する国境管理をする必要があります。
しかし、これは英国・EUともに望むことではなく、できれば国境をオープンなままにしたいというのが本音なのです。
これに失敗した場合に発動する保険、あるいはセーフティーネットのようなものが「バックストップ」と呼ばれる条項です。
協定案では、アイルランド国境問題が解決されるまで、事実上英国をEU関税同盟に一時的に残す措置である「バックストップ」が盛り込まれましたが、合意なき離脱を求める英国保守派は、恒久的に英国をEUに付随させる可能性があるバックストップ期間を、限りなく短期間に、あるいはバックストップ込の離脱案自体を否定しているのです。
英国議会承認に向けて、アイルランド国境問題が最大の火種となることは必至ですから、バックストップに関して、今後メイ政権からどのような説明がされるのか、また、反対派議員や国民がどのような反応を見せるのかが注目されます。
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